二択
「二択しかないの?」 彼の言葉にあたしは黙った。 二択。 増やそうと思えば増やせる選択肢。 でも、増やしたくない。 「ねぇ」 いつもと同じように、あたしは彼に話し掛けた。 あたし達が周りに、どう取られているかは知らない。 何もない、というのが事実だけど。 「どうした?」 「聞きたいことあって」 「ふん」 彼はあたしの方を向く。 「今仮に好きな人がいるとして、関係が悪くなることを覚悟で告るか、 バレバレでも黙っているか、どっちが良いと思う?」 「え?」 難しい質問だと思う。 「その、どっちかだけ?」 彼は少し考えて言った。 「うん」 あたしは頷く。 「二択しかないの?」 あたしは黙った。 増やせないのは、増やしたくないのは、 「…うん、二択しかないの」 あたしは笑った。 実際のところ、もうどうだって良かった。
20090203