執筆日不明 / 旧拍手依存症 格子の向こうに、白衣を着た女がいた。 小さな丸い高めの机の上には、グラス一杯の水。 彼女はおもむろに懐から何かを取り出した。 仄暗い蛍光灯の光を受け、それは銀色に輝く。 クスリ、だった。 「僕を捕まえた側に居る人が、目の前でヤクやる訳?」 僕は嘲りを込めて言った。 彼女は顔を上げて僕を見た。 その瞳は、酷く湿った黒をしていた。 「これは歴とした処方箋だ。 まぁ、依存しているという点では君と変わらないが」 堅苦しい口調。 「でも」 彼女の言葉は続く。 「私たちは、何かに依存していなければ生きていかれないだろう?」 僕は笑った。 大声を上げて笑った。 なぜなら、彼女の言うとおりだったからだ。