ベストアーティスト
麦茶の味と色の関係を僕は詳しく知らない。 色は麦茶なのにまったく味のついていないこともある。 あれは、何なのだろう、どうして味と色は一体ではないのか。 僕は首を傾げる。 テレビの中では人がトロッコから落ちていた。 コップを手に取る。 やはりそれは、麦茶の色のついた水だった。
花粉症
頭がもやもやとしていた。別に何か悩んでいるわけじゃあない。 ただ、何かもっと物理的な理由だ、それだけは分かっている。 ぶつけた訳でもないが、この頭はもやもやと違和感を抱えている。 もし、今この頭に抱えられている違和感が内側からその頭蓋骨を叩き割って、 出てきたら僕はどうするだろう。僕は神様じゃあないので生き残れないだろうし、 出てきた違和感もきっと神様なんかにはなれない。僕から神様は生まれない。 それは僕が一番よく分かっている。 いつだかあの子は僕を見て神様のようだと言った。 それを笑って、嘲笑って否定しのはそういう訳だからだった。僕は頭を抱える。 膨張色がずっともくもく湧いてくるみたいで落ち着かない。腹に肉はついていない。 何もない。胃の中に、胃液が少しだけ。 カーテンは閉まっていた。サボテンはずっと昔にひっくりかえった。 僕はまだ、この違和感の正体を突き止められずにいた。 僕は違和感に、下されていた。頭を抱えわ地に膝をつき、僕は浅く息を吐く。 まるで違和感と性交でもしているようだ。鳴呼、きもちわるい。 くしゃみが出た。鼻水が飛んだ。それで思い出したがティッシュが切れていたのだった。 僕は立ち上がった。違和感は消えていた。僕はティッシュを求めていた。
怖い夢
夢を見た。 手が動かなくなってしまう夢。原因は君を庇った為だった。 学校にやってきた悪人。いつものように、そう、クラスメイトにするように、 悪人に向かって正論をぶつけた君はそいつを怒らせてしまったんだ。 それで君が撃たれそうになった。僕は君が傷付くのが怖くて、何も考えないままに飛び出した。 二回の銃声、ほぼ一つの痛み。でもあまり覚えていない。何も考えていなかったから。 悪人は捕まって、僕は病院へ。悪人の腕が良かったのか、 それともただの偶然なのか―――どっちにしても僕は悪運の女神に愛されていたらしく、 二つの弾は僕の両の腕の神経を、ぷっつり綺麗に切ってしまったらしい。 医師からは、もう動くことはないだろうと言われた。 お見舞いに来た君はものすごく泣いていた。何回も謝ってきた。 でもその時の僕は、腕の動かないこれからの生活よりも、その瞬間の君が泣くことの方が、ずっと、 怖かった。
20141208
20150603 追加