20150603愛し愛され愛してないよ 愛しのエリー 堕天使の声が聞こえますか。 名古屋の雑踏。その途中でそんな言葉が聞こえて立ち止まる。 大スクリーンの、その中に。真っ黒い衣装に身を包んだ少女が微笑んでいた。 これがのちの嫁となるアイドルとの、ファーストコンタクト(一方的)。 堕天使、名古屋、声 * マイちゃんの日常(タダ働き) 赤のスカートが翻る。 「エンジェル・マイちゃん登場でっす!」 語尾に星だとかハートだとか飛ばす勢いで躍り出て、そのまま不埒な輩を蹴り飛ばす。 「よっ、マイちゃんかっこいい!」 これが下水道でなければ、その声援ももっと素直に喜べるのに。 エンジェル、下水道、赤の * とある忠臣のはなし 素晴らしい、と彼は言った。映画館でのことだったので心の中でだけだった。 けれどもそれは隣にいた僕には聞こえていた。 王者たる彼の心をどんなときも推し量る、それが僕の仕事だった。 王者、映画館、素晴らしい * 愛し愛され愛してないよ 森の終わりには魔女が住んでいる。それを知っているのは堕天使だけだ。 「でもそれって素敵なことじゃない?」 何度追い払ってもやって来るこの少女は、元天使というよりかは悪魔だ。 「私が貴方を独り占めできるってことだもの」 少女は美しく微笑んだ。 逃げられない、と悟った。 堕天使、森、終わり * 少女漫画的ヒロインとかマジ勘弁 日本の通勤ラッシュは地獄だ。そう思う。 「ねーねーおねーさん」 「名前だけでも教えてよー」 毎朝美形の双子に口説かれるなんて本当、地獄でしかない。 主に他からの羨みの視線とかそういう意味で。 双子、日本、通勤ラッシュ * ライトライトライト! 秘密の花園なんてものがあれば良いのに。 そんな夢見がちなことを思っていた冬休み、何故かゾンビに懐かれた。 うっかり私が墓石を踏み抜いたのが悪いのだけれど、 こんなラノベみたいにゾンビを侍らせておくのはどうなのか。絵的に良くないのではないか。 そうは思うも腐りつつも可愛い笑顔でついてくるゾンビを、私は邪険には出来ないのだ。 ゾンビ、秘密の花園、冬休み * もうなにも怖くない 人食いなんてものがいるはずないと入った森の中で、出会ったのは冬のような少年だった。 「ああ、僕のことを人食いと言う人もいるねえ」 食べたことなんかないんだけど、と笑う少年はただ普通に見えた。 伝説の正体を、まだ知らなかった頃の話。 正体、人食い、冬 * かく言う私も腐女子でね 悲しき怪獣を知っているだろうか。 とある色眼鏡の外し方が分からなくなってしまい、途方に暮れて吼えるもののことである。 それは外し方を覚えるとつけたりとったり世界が広がるものだが安定するまでは それはもう周りなど見えな場所でどん詰まりに陥るのである。 それを人は腐女子と呼ぶ。 怪獣、腐女子、悲しき * 旅立ちの日に 国道がずっと続いていく。先が見えない。 辞表を課長の頭に叩きつけてニートになった身からすれば広すぎて目眩がしそうだ。 怠惰の気はないはずだったが、この道を一人行くのは相当骨が折れるぞ、と思った。 笑う。それでも、選んだのは自分だ。何を言うことも、しない。 これも新しい門出だと、一歩、踏み出した。 ニート、国道、怠惰の * さよなら僕たちの仄暗い青春 母校である中学校が破壊されたらしい。原因はロッカーに仕掛けられていた爆弾なんだとか。 それを聞いてああ、と思い出したことがある。 まだ僕が中学生だった頃、虐められていた同級生のことを。 絶対にこんな世界壊してやると、すぶぬれでそう言っていた雨の日のことを。 彼がやったのだ、と思うことはしなかった。それには僕はあまりに大人になりすぎていた。 なのに、ああ、なんでだろう。彼にものすごく会いたかった。 ライトレ