夢
今の自分の夢は何だ?
そういう質問に、一言で答えるのは難しい。
ヤマトはバスに揺られながら考えた。
夢?何なのだろう。
僕は今、何を考えている?
バスの振動で、眼鏡が揺れる。
ぐらりと歪んだ景色が見えた。
母親に大きな声で話す少女。
携帯に向かって話し続ける女子高生。
部活の話に熱中する男子中学生。
ゲームの音を上げる少年。
何の話をしているのか、時たま笑い声を上げる男たち。
腐っているのだ…。
ヤマトは目をつぶった。
この世には下等な連中が多すぎる。
そんな奴らには、思い知らせてやらなくてはならない。
バックの中から、一つ取り出して、愛想の良い笑みを浮かべ、少女と目を合わす。
にっこりと返された瞬間に、ヤマトは少女の手を引っ張った。
腐っている。
腐っている。
母親の驚いた顔にニヤリと笑いかけ、ヤマトはそのまま運転手の方へ。
小さく囁けば、運転手の顔色は面白いように変わった。
どこへ行こう。
どこでも良いかな。
バスの一番前で、ヤマトは笑う。
少女の目には涙が浮かんだ。
叫ばないのは、さっき囁いた言葉と、首に光るものの所為だろう。
「お楽しみの所、すみません」
ヤマトは笑いながら呼びかけた。
「このバスは僕がジャックしました」
しんと静まりかえる車内。
「騒いだりしたら、この子を殺しますので」
笑顔でそう言えば。
乗客たちの顔が青くなった。
少女の首で、ナイフを光らせる。
夢?今分かったよ。
この世の腐った奴らに報復すること―――。
そんなもんでどうだい?
20071202
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