夕日
赤い、あかい、紅い。 世界があかい。 夕暮れ時の空の下で、洫はじっとその紅を見つめていた。 光は世界を平等に照らすように、其処に立つ洫もまた、紅く染めていく。 「…私は、これからどうしたら良いのかな」 ぽつり、呟く。 色のなくなった世界で唯一見つけた色。 それを追い掛けて今立つのは紅い海。 望んだ色の中、満たされている。 はず、なのに。 「もう私のやることは終わったのに、まだまだ、足りない…」 溢れるのはもういない家族の名前。 返事がないことが怖くて悲しくて、それでもそれが現実だと分かってしまって。 「もっと、もっと…思い知らせたい。 へごみだけじゃない、同じようなやつらに。 私を笑ったやつらも、哀れんだやつらにも、全部、ぜんぶ、思い知らせたい。 復讐を、もっと、もっと…」 誰に伝わるでもない言葉が曲がっていくことに洫は気付かない。 それはもう復讐ではなく、 八つ当たりの部類になるであろうことに、洫は気付かない、気付けない。 とり憑かれているだけなのに、まだ、自分の足で歩いてるだなんて錯覚をしている。 震える手も、夕日は容赦なく染めていった。 「ごめんなさい」 それはまるで、もう後戻りは出来ないと、分かっているような。 そんな、絞り出すような謝辞だった。
20140220
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