哀しみを呑み込む、空。 少女が一人、空を見上げていた。 まっくろな空。 夜という時間の空。 その空を、少女は見つめる。 少女は座って、夜を少し感じた。 「大丈夫、まだ大丈夫」 どこからか声がして、 「もう駄目よ、限界なの」 またどこからか声がした。 少女は小さく息を吸い、空から零れ落ちる哀しみを吸い込んだ。 その小さな口から零れぬように、一滴(ひとしずく)たりとも落とさぬように、 少女は懸命に喉を動かす。 少女が雫を呑み込む度、空は明るさを増した。 そして、“朝”へとなっていく。 「大丈夫?」 “朝”が聞いた。 「平気よ」 “夜”は答えた。 次に自分の番が来るまで、深い眠りにつきながら、 体内の全ての哀しみを、浄化してしまわなければ。
20071202
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