此処に愛はないよ(ないよ、) 

 生産性のない少女であると後ろ指さされながら生きているすべての日々をぐちゃぐちゃに踏み潰してわたしはいつの日か怪獣と呼ばれるようになりたいのかもしれなかったけれど、多分花が嫌いである限りわたしには不可分なものがあるのだと分かってしまうので、ああ、こんな賢さなら最初から必要なんてなかったよね。本当だよ。



ずっと夢を見て幸せだったなあ卵と骨を置いて帰ろう / 卵塔

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やさしいひと 

 テレビのニュースでまた人が死んでいる。
 にんげんはみんなびょうどうです。
 嘘ばかり、嘘ばかり。可哀想という言葉は格付けだよ、君がそれを下に見ている証拠だ。死んだのが自分じゃなくて良かったね、おまえが死ねば良かったね、そんな呪いの言葉を待っているくせに、死ぬための理由を探すなよ、死ぬための論拠を探すなよ。

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水のまち 

 君が僕を愛したところで僕が君と一緒にいられることなんてぜったいないんだよ。



(それでも一緒にいたいなんて、きっと傲慢なんだろうなあ)

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ゴミ箱の住人 

 咲いている貴方のことが綺麗だなんて死んでも言えなかった。だって貴方はそのうちに枯れて消えてしまうから。貴方が私にその実を託したとして、私は貴方を迎えられない。貴方ではない貴方を私は守るのか、愛すのか、そんな不器用なことを私は出来ない。
 無様になれたらよかったのにね。

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カーネションリリンネーション 

 美しくなれなかったものの残骸みたいに私たちは生きている。本当は生きていかなくたっていいのに、それを選択する。あーあ、惨めだな、惨めなのかな。誰かが惨めだって笑ったからそういうことにしてるんだ。
 脳がざわざわと、誰かに触られているようで。
 これもまた性行為みたいなものなんだろう、電脳ネットワーク、貴方は残念なことに其処にいるし、私もまた貴方を見えているよ。私たちは美しくはなれないけれど、残骸にもなれないよ。残った骸は消えてしまうから、最初から何処にもないから。
 なら君を殺してもいいよね。

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この羽根をください 

 いつだって僕らは世界と旅を続けることが出来るのだと、本当は誰でも知っていることなのに誰だって忘れてしまったようなふりをする、そんな世界で生きている。

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スウィーティー・スウィーティー 

 貴方のいる世界だから、とか、僕のいる世界だから、とか言い訳して欲しくない。この世界には輝かしいものがたくさんあって、だからその分影がある。ある。ある。あるよ。僕はその影で生きているよ。貴方のいる光に灼かれながら。

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おやつ 

 本当は夢を見ていたの、誰にもいえない夢、パンケーキのように甘やかでわたしだけがいきている夢。だから誰にもいえないの、君が何処にもいないから。わたしは君がいないと嫌だから。夏なんていつまで経っても来なくて良いよ、わたしはいつまでも春の名残をソースにするの。
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紅茶には砂糖を六個と言ったはずよ! 

 貴方の旅の記録を識りたい、貴方の旅の事実を識りたい。けれども貴方は口がお上手だから、わたしに何も本当のことを教えちゃくれないの。

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切り取り線とカーテン 

 貴方のいる世界は美しいよ、とそれを言ったところで貴方が納得してくれる訳でもないのに、それでも僕は言葉にする。画家が筆をとるように、作家がペンを掲げるように、僕は僕で、歌をうたうのだ。この喉をか枯らしながら、そんなことを誰も望んでいなくても。夏の、気配がしている。貴方はそれを望んでいないことを、僕は知っている。



20200511