20150203また明日 静かだ、と思った。いつものことなのに、妙に心臓がざわざわ騒いでいる。 お風呂をすませて、見たかったテレビも見て。 それでもう今日はやることもなく、ベッドに入ろうとそう思った、その瞬間のことだった。 何があった訳でもない。連続する日常のうちのワンシーン。 誰もいないかのように錯覚する静かな時間。裏の森はいつだって風からこの屋敷を守ってくれていて、 屋敷の主も部屋に引きこもっていて。 いるはずの従業員たちは元々目に映らないし、何がいつもと違うということもないのに。 まるで。 世界に一人取り残されたような心地。 ふらふらと足が意志でも持ったかのように歩き出す。ずるずると、冷たい廊下を滑るように。 そっちに行くのか、とまるで他人事のように思った。コンコン、硬い音が廊下に響く。 「何?」 中から言葉が返ってきてほっとした。煩かった心臓が気は済んだとばかりに平常運行に戻っていく。 薄情な気もした、自分の一部であるのに。 「あ、えっとね、もう寝るからおやすみって言いに来たの。…仕事、邪魔しちゃった?」 「…別ニ」 ごそごそと音がして、暫くしてから扉が開く。 「おやすミ。廊下は冷えるカラ、早く部屋ニ戻りなヨ」 「うん、そうする。おやすみ」 何だか今日は、良い夢が見られそうな気がした。