エンゼルライフ
握ってみた手はひどく小さく感じられた。
「…×××?」
いきなり手を取られた俺の可愛い子は何がしたいんだとばかりに、
じっとりした目を向けてくる。
まるで排水口の中にべったりくっついたよくわからないものを見つめる時のような目だ。
ちょっと胸の辺りが痛む。
心というものの存在を知れたことを、俺は残念ながら運命だとは思わない。
あれはただの偶然だった。
バグのようにはみ出したもののしっぽを、掴む機会があっただけの話。
けれどもそんな誰かの悪戯のような偶然でも、今はただ感謝したかった。
そういうものがなければきっと、今こうしてこの愛しい子に出会うことも、
出会っても愛しいだなんて思うことも、なかっただろうから。
俺に、出来ることはなんだろうか。
手を握ったままに、考える。
だって、まだこんなに小さいのだ。
知らないことも、たくさんあって、それでもこの子は生きている。
「なぁ、×××、なんなんだよ。どうしたんだ?」
「いや、別に。ただお前の手、綺麗だとおもってなー」
「はぁ?別に、普通だろ…」
この世界が美しいことを、この子に教えてあげられたら。
崩壊を待つだけのその心を、救ってあげられたら。
20141121