飛び交う弾丸、瞼の裏に残る紅。
そこでは何もかもがぐちゃぐちゃだった。



少年兵
十二歳という年齢も、国にとってはどうでも良いようだった。 欲しいのは金だった。 長く続いた戦争のおかげで国内は疲弊し、 元々貧乏だった俺の家は目も当てられない程になっていた。 国から兵を出した家庭に出される支給金目当てに出願して、 見事書類審査を通った俺は戦地へと旅立った。 戦いに甘さなど一切なく、毎日毎日人を殺す日々。 そうでもしなければ自分が死んでしまう。 弾丸が身を掠め、視界に赤が広がる。 繰り返して、繰り返して。 何も恐れるものはない、相手は敵なのだ、やらなければ殺られるだけだ。 自分に言い聞かせた。 感覚が麻痺していくのが分かる。 狙撃手だった俺にとって、特攻隊の兵士たちよりは殺す感覚というものは薄いはずだった。 それでも、怖かった。引き金を引いた直後、身体全体を震えが襲う。銃弾に貫かれて動かなくなる身体を見て、吐いたことは数え切れない。 それでも俺は耐え抜いた。 三年経って戦争は終わり、全ての兵士が家に戻ることが決まった。 同僚たちと生き残れたことに涙を流して喜んだ。 軍部に寄り最後の報告を聞いて、そうしたら全てが元に戻る。 地獄は終わる。 そう、思っていたのに。 あまりにそれは軽い音だった。 俺が三年間してきたのと同じように、弾が俺の心臓を貫いた。 どうして、と自分を撃ち抜いた上司を見つめる。 「それを始末しろ」 「流石大佐、一発ですね」 「あぁ、生きてられると厄介だからな。 政府も馬鹿なことをする。 支給金など、何処から出せというのだ」 「全くです」 「平民はこれで良いとしても、貴族にはそうはいかん。 なんとか金を工面しなければ…」 話を聞きながらぼんやりと思った。 理不尽だ、と。 それでも貴族出身の同僚はこうはならないのだと知って、安心している自分もいた。 幾許かの時が過ぎ、俺は銀色の子供と出会う。それはきっと、また別の話。
20070910
20120903 改訂