20140304小規模戦争 緊張感が満ち満ちていた。両者黙ったまま、睨み合う状態がかれこれ三時間である。 二人の間にあるものがアイスでなくて良かった。アイスならとっくに溶けている。 まぁ、アイスと大差ないかもしらないが。二人の間にあるのは黄色の物体だった。 ぷるるん、と揺れる、頭だけが茶色に染まっているもの。 そう、プリンだ。プリンである。紛うことなきプリン。 「………買ってきたのは私だ」 重い沈黙を破って声を上げたのは、居候の方だった。 「それは俺の金だ」 本当に、本当に居候しているだけの身に返す言葉はそれしかない、 流石に家事をこなしているだとか、そんなであれば何も言わずにプリンくらい譲った。 それが例え大好物だったとしても、 いつもありがとうくらいの気持ちがあれば譲った。 今譲らないのはそんなものが欠片もないからである。 そもそも、この居候を許可した覚えはないのだ。 ある日突然ラノベの如く転がり込んできたこれは、再三の勧告にも無視し居座っているのである。 「地球人はケチなのか」 「エイリアンの文化ではジャイアニズムが横行してんのかよ!?」 そう、これは地球外生命体なのである。 何度かそういう系の機関に連絡を取ってやろうとしたものの、すべてが悉く阻止され、 結局のところ居候を許す羽目になっているだけのことである。 その辺りをぶらぶら散歩しているらしい居候は着実にご近所様と仲良くなっていて、 気付いたら追い出しにくくなっていたのも一つある。外堀だ、外堀を埋められた。 「ジャイアニズムとは」 「俺のものは俺のもの、お前のものも俺のものっていう主義主張」 「…? お前は私のものだろう? よってこのプリンは私のものだ」 「あああ心なしかズレた気がするし俺はお前のもんじゃねええ」 エイリアンというのはそもそも地球人をペットだとかその辺の認識をしているらしく、 やって来た当初からこんな感じである。 それを考えるとこのこう着状態に持ち込めてるだけ、良いのかもしれなかったが。 それの話を聞く限り、エイリアンと地球人では文化も武器も何もかも違いすぎる。 多分戦争にすらならない。 VSの構図に乗れるのは同じ力量のものだけだ。飼い主とペットではどうにもならない。 「そういう訳で」 にゅっと伸びてきた手がプリンを手づかみで攫っていこうとする。 あっと声を上げる間もなく、それはぐちゃぐちゃに砕け散った。ああ、と思う。 エイリアンの方も微妙な顔をしていたが、 自分の手についた残骸を舐めて幸せそうな顔をしていたので、きっと良いのだろう。ライトレ エイリアン、VS、地球人