Reaching out for me
降り注ぐ陽射しの中では自分のすべてが浮いているような気がした。 手入れがし易いようにと短く切りそろえられた髪は、父親譲りで色素が薄い。 …らしい。 記憶の中で父に会ったことはないから、本当のところは分からない。 写真など見せられても、実感など沸かないのが実情だ。 すい、と伸ばした手は青白く透けていた。 その中に詰まる血管やら何やらが浮かび上がりそうだ、なんて思う。 「…僕と、同じ名前」 眩しい。 遠く離れたそれはガスだとかそういうものの塊で、 こちらから見るようなきらきらしたものではなく、ただ只管と生命を燃やすものなんだそうだ。 それを聞いた時、少し笑ってしまった。 遠く離れているとこんなにも違うように見えるのに、本質は似ているなんて。 「でも、違うんだよな」 只管に、と言った。 そこは確かに似ていると思う。 しかしきっと、効果音が違うのだろう。 向こうは轟々、こちらは細々と言ったところが限界だ。 「…なんで、なんだろうな」 世界を照らし続けるそれと、病院という檻の中から出られない自分。 正反対。 みんなが口を揃えて言うだろう。 名前負けだ、そんな名前だから―――何度言われたか分からない。 触れたいと思った。 同じ名前のそれに。 「太陽」 呼ぶ。 呼んだところで、返って来る訳がなかったけれど。 「みねぐも、たいよう…峰雲大洋」 自分の名前を呟く。 どれだけ手を伸ばしてもそれに触れられることなんて、 それみたいになれるなんてないと、本当は分かっていた。
20140602