長く一緒にいた影響
私は貴方で、貴方は私なのに。
人間として生きるうえで生まれた人格は、そう泣いたことがある。
彼女がまだとても幼かった頃の話だ。
その成り立ちの所為か大人びた子供であった彼女が、そう口にするのに違和感などなかった。
そう、彼女の言う通りだ。
浮木成はウキギで、ウキギは浮木成なのに。
「何でも叶えてやりたい、なんて」
それはまるで、人間のような願いだった。
どうにかなってしまいそう
お前が好きだ、といつもの静かな声で言ったトオルの手だけがやけに熱くて、
今この瞬間、浮木成という存在は紛れもなく人間なのだと思い知らされた。
「それ、は」
「恋愛という意味で」
お前の事情は知っている、わかっている、それでも、と続けるトオルは年相応で、
私はその日、初めて恋を知ったのだ。
おいていかないで
暗闇をずっと走っていた。
いつものとは違う、はやく、此処を抜けなければ。そう思う。
心臓が痛くて、脚も痛くて、でも止まることなど出来ないで。
「…ッ成!!」
自分の声で、目が覚めた。
「…ゆ、め」
途端、ぶわっと汗を感じる。いつか、いつかあいつは。
「どっか、行っちまうのかな…」
いつもの、笑顔で。
20150304