馬鹿には楽器は分からない



ずるずると音がする。ああ嫌だな、と思う。
これは振り返ってはいけないタイプのやつだ。敵意がびしびし来る。

しかし隣を歩いていた後輩と言えばそんなことは関係なく、
「それ貸してもらえますか」
と人のベースをひったくってそのまま後ろに振り下ろした。
「あああ! 馬鹿ー!!」
「どうしたんです」
消え行く骸骨など知ったこっちゃない。
「それ三十万したんだぞ!」
「楽器を値段で換算しないでください」
「馬鹿にはそうでもしないと分からねえだろ!!」
「ええー」
笑う後輩の手から可愛いベースを奪い返す。
急いで開けてみるが特に傷もついてないようで安心する。

ああ、とんだ目にあった。



ベース、骸骨、敵意
後輩が最強すぎて生きるのがつらい 冬の夜の匂いがした。今は夏の昼のはずなのでまずあり得ない。 「先輩」 「ベースは貸さんぞ!?」 以前それで良からぬものを殴られたのを俺は忘れてはいない。 「じゃあしょうがない、かめはめ波で」 「打てんの!?」
昼、冬、ベース
逢魔時のクラスメイト どうやら放課後の校庭にはミサイルが埋まっているらしい。 「不発弾っていうやつ?」 「そんな感じ」 「なんで放課後?」 「さぁ?」 ぼんやりとした話の中で、逃走欲を掻き立てる下校の音楽が鳴る。 それに呼ばれるように立ち上がると、その子は首を傾げた。 「何処へ行くの?」 「帰るよ」 「そう…」 「君は?」 「ミサイルを掘りに行くわ」 それが私の役目なの、そう言った彼女に会ったのは、あの放課後だけだった。
ミサイル、放課後、逃走
マイナスだってかければプラス 小さい頃UFOを見たことがある。 走ってみたら加速するし、止まってみたら止まるし、 面白くてジャンプしたらそのまま何処かへ飛んでった。 「それ、狙われてたんですよ〜。 行動追いかけてって、同じように上に上がったら勢いで大気圏抜けたんでしょう、 ドジな宇宙人ですね」 こいつの話を聞く限り、俺はとても運が良いらしい。
ジャンプ、UFO、加速
最終兵器召喚 真夜中に帰路を辿っていたら背後に気配を感じた。 誰もいない道である。街灯もない。 これで俺が主人公とかだったらこれをぎったんぎったんに倒せるのだろうけれど。 携帯を取り出す。 『やだ〜先輩、後ろに何侍らせてるんですかー』 「知りたくないからさっさとどうにかしろ」
主人公、道、真夜中
ライトレ
20150304