「酒はやめとくか」
日が傾いて来た道を二人並んで歩く。
何時の間にかすべてのものが小さく見えるようになっていて、雁来はため息を吐いた。
小さい頃から世界は変わっていないのに、成長してしまった自分がもどかしい。
「別に、飲めるよ」
「オレ未成年だし」
「そんなのアタシもよ」
長い影を見つめる。
二つ仲良く並ぶ影。
「…いつ、帰ってきたの」
「今年の春。お前が出てった後かな、すれ違いだったんだよ」
「聞いてない」
「ごめん、言い忘れてた」
あっけらかんと笑う幼馴染に胸がつきりと痛んだ。
帰って来るということは、こんなに笑って言えるようなことではなかったはずだ。
「そんな顔すんなよ。
オレお前が思う程気にしてねぇよ。仕事も忙しいし」
頭を撫でられる。
昔と同じ仕草。
泣きそうになるとしてくれたこと。

「…アタシが就職するまで、待てる?」
「うん?えっと、うん、待てるけど、何を?」
内容を聞く前に待てると答えてしまう彼に笑う。
「アタシが就職したら一緒に暮らそう。
此処から出よう。
こっちで探すけど、此処から…家から出よう。
新しい家を作ろう、かえるとこ。
アタシがアンタの帰るとこになる」
まくし立てた。
うん、うんと頷いていた彼は、
「それ、プロポーズ?」
なんて笑って、
「分かった、楽しみにしてるね」
また頭を撫でるのだ。



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20120911