ぱかぱか、と点滅してメールが来たことを知らせるそれを、ヒバリは拾った。
「センパイからだ、珍し」
誰にいうでもなくディスプレイされた六匠統、
という表示からその呼び名を呼んで、携帯を操作する。

一つ上の彼女は男のような名前をしているが確かに女であり、
名前に負けず劣らず男勝りな性格はしているがとても美人で、ついでに勉強も出来て。
柚木雲雀、なんていう女みたいな可愛らしい名前をしているヒバリの先輩で、
そして何よりも大切なのは、恋人であるということ。

なになに、と開いたメール。
『馬鹿が見る』
思わず、言葉を失った。

携帯を握りしめたままベッドにダイブする。
何なんだ、一体。
何がしたいんだ、センパイは。
暫くうんうんと唸ったが答えは出ず、
けれども良い返しも思いつかないしで、ヒバリはまたうんうんと考え込んだ。

馬鹿だから見ちゃいました。
却下だ。

馬鹿じゃないので見えませんでした。
だめだ、既に見えていることを肯定している。
そもそもメールとはこうやって使うものではない。
珍しくメールしてきたと思ったらこの人は!

結局良い案は出ずに、のっそりと上体を起こしたヒバリは電話帳から一つの番号を呼び出した。

ぷるる、とワンコールが終わる前にはい、と聞き慣れた声。
電子機器を挟んでいるからか、なんとなく新鮮に聞こえる。
『なーに、ヒバリくんっ』
声がるんるんで何よりだ。
「センパイ、メールはああいうふうに使うものじゃないでしょう」
『あら、そう?』
「何かもっと他に、あるでしょう。流石に馬鹿が見るはひどいです」
『ごめんごめん。一回やって見たかったんだ。
で?ヒバリが考えるメールっぽいことって、なーに?』
「え。…ええと、デコメ、とか?」
『はー、デコメ』
「うん…だめですか?」
『いや?駄目とかないけど』
ぶちり。
突如聞こえてきた切断音にびっくりして画面を見ると、もう通話は切れていた。
本当に何だったんだ、そう思ったのが消えないうちに、また携帯が光る。

「………あー…もう」
開いたメールは紛れもないデコメール。
きらきらぴかぴか、輝くスキの二文字。
『こーゆーことしてほしかったんでしょ』
下に添付されていた文章に反論する気にもなれず、
はぁ、と息を吐いてから、ヒバリはメールを作成し始める。
絵文字や色文字をふんだんに使った愛してるメール。

数分後、
確実にそれを超えるクオリティで私だって愛してる、と届くことをまだヒバリは知らない。





20140110
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