「ねぇ」
「ん?」
音音(ねおん)は隣にいる風(ふう)を見つめた。
「恋って何だと思う?」
風の問いに、音音は彼の持っている本に目を落とす。
「その本に書いてあるの?」
読書家の風は、本を読んでいる途中、良く音音に聞いた。
“×××って何だと思う?”と。
それは簡単なことだったり、難しいことだったり。

それが、今回は恋。

「恋か…」
音音の呟きに、
「あ、あともう一つ」
風は付け足す。
「愛って何だと思う?」
「―――」
音音は黙り込んだ。
「難しい、よね」
風はパタンと本を閉じる。
「恋と愛の違いについて、登場人物たちが話し合ってるんだ。
その二人は答えを出せないまま、口付けをするんだけど、どうも納得いかなくて」
確かに納得いかない。

だけど。

「じゃあ、私たちもそうしない?」
音音は風の肩に手を掛けた。
「それに、登場人物たちは、もう、答えを出し終えていたと思うの」
ゆっくりと目を合わせる。
「私が風を想う気持ち。風が私を想う気持ち。これが、恋」
にっこり笑うと、
「そして」
ゆっくり、甘く、口付けて、

「これが、愛」

風は笑って音音を抱き寄せると、
「じゃあ、こっちからも」
もう一度、愛を求めた。





20070928
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