我が侭言ってもいいですか そわそわと、隣の愛し子が落ち着かないのを花紀は気付いていた。どうしたのだろう、と思いながらも、彼女が言い出すまで待つことにする。 「あ、あのっ」 そしてようやく、待った甲斐があってその小さな花片のような唇が開かれた。 「花紀さん、」 ばっと出されたのは手。はて、と花紀は思う。何だろう。何かを欲しがるというのとは違うように見えた。その掌は横を向いている。 「柚?」 「そ、その…」 我が侭なんですけれども、と背の割りに子供らしい顔で、少女は言う。 「…手を、繋いでください」 それを聞いた花紀は笑った。 「お安いご用ですよ、お姫様」 「お姫様じゃないです!」 そんなもの、我が侭でも何でもないのに。 顔を真っ赤にして、それをねだる彼女が、とてもかわいらしかった。 * イトシイヒトヘ http://nanos.jp/zelp/ 片桐花紀(かたぎりかきの) 思草柚(しおんゆず) *** |