我が侭言ってもいいですか 

 そわそわと、隣の愛し子が落ち着かないのを花紀は気付いていた。どうしたのだろう、と思いながらも、彼女が言い出すまで待つことにする。
「あ、あのっ」
そしてようやく、待った甲斐があってその小さな花片のような唇が開かれた。
「花紀さん、」
 ばっと出されたのは手。はて、と花紀は思う。何だろう。何かを欲しがるというのとは違うように見えた。その掌は横を向いている。
「柚?」
「そ、その…」
我が侭なんですけれども、と背の割りに子供らしい顔で、少女は言う。
「…手を、繋いでください」
 それを聞いた花紀は笑った。
「お安いご用ですよ、お姫様」
「お姫様じゃないです!」
そんなもの、我が侭でも何でもないのに。
 顔を真っ赤にして、それをねだる彼女が、とてもかわいらしかった。



イトシイヒトヘ
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片桐花紀(かたぎりかきの)
思草柚(しおんゆず)

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