朝なんて来ないから、もう眠ってもいいよ 大嫌いと、言ったことすらなかった。だってそれは当たり前で、それ以外になかて。だからその人から言われた言葉で彼を連想したとき、ぞっとした。 そんな、ものが。 自分の中にあるなんて事実が、それが母を誰よりも愛してくれた侍従への裏切りに思えて、ぞっとした。 * 朝は来ない @asa_k_bot *** 私が馬鹿だとか、そんなの私が一番知ってるから 何も喋らない顔を見た時に思ったほど絶望していなくて驚いてしまった。いつかこんな日が来るからと、怖い話を語ってくれた彼のその教育が最期の最期まで生きていた証なのかもしれない。 「でもね、栗松」 貴方が守った私は、貴方を失ったことで未来への展望を全て棄てたのよ。 * 箱庭006 @taitorubot *** 世界は絶望に染まるでしょう 貴方の母上は私の恩人なのですよ、と彼が未だぎこちなさを残す丁寧な言葉で教えてくれた物語はまるで御伽話のようだった。そんな感想を抱いたから係子は知っていたのだ。素敵なおはなし、素敵な幕引き、その先にも物語は本当は続いていることを。そしてハッピーエンドのその先にあるのは更なるハッピーエンドではないことを。 「だからね、決めていたのよ」 その時が来たら。 ただそれだけの、気まぐれみたいな決意で。 * @asama_sousaku *** 私を見てて 役に立ってみせるという言葉を嘘にする気はさらさらなかった。勿論自分が世間知らずであるということは分かっていたが、それでもその中で得たものはあるのだ。 プライドだけが私を保たせていた。 「落ちこぼれなんて言わせないわ」 誰でもない誰かが言った言葉は今も尚、私の中に残っていた。 * いつだって君を夢中にし続ける女でいるから見逃さないで / 栞 *** お前は何度架空の者を殺した 「殺すのだけは上手に出来るのよ、本当、想像だけは。だって私以外の誰かがこの国を率いることになっても地獄しか見えないし、いえそもそもこの国に待っているのは地獄でしかなかったわね。占いなんて、この時代によく生き残っていたものよ、昔の風習に囚われて動けなくなるなんて現代人のすることじゃあないわ。外では自分の力で未来を切り開いているのにどうして私たちは占いなんて不確かなものに頼らないと生きていけないの? ねえ、馬鹿馬鹿しいって言ってくれるでしょう? 人を殺したことがある貴方なら」 * 神威 http://nanos.jp/kamuy2/ *** この楽園から救い出してくれたのは黒い魔王だった 嘘みたいな話でしょう、と物語にするのは簡単だろうと思う。物語を何処で切れば美しくなるのかもう知ってしまっているから、余計に。だけれどもきっとこの話は誰にもしないのだ。 何故なら、 「もう貴方は何処にもいないのだものね」 * 箱庭006 @taitorubot *** きっとあの時に変わったんだ こんな毎日を願う僕に 忘れない、と思う。それは思う≠ニいう行為よりもずっと強い意志だとかそういうものだった。決意、だ。薄ら笑いを浮かべる妾腹の妹を真っ直ぐに見つめる。倒れて苦しむ彼に私が動揺すら見せなかったことを、少しだけ怪しんでいる彼女を、見つめる。 ―――貴方が殺したんでしょう。 ―――ならどうしてその結果を見つめないの? 成功したのに。 静かな私に彼女は少し憤って、それから早く目障りだから片付けて、と言った。すぐに片付けられていく彼だったものを、私は追うことはせずにただ部屋に戻るとだけ言って席を立った。 ―――姫様。 ―――私だけの姫様、未来の女王陛下。 貴方の所為よ、馬鹿、というのは言葉にしなかった。 * image song「日曜日」back number *** 空の内臓に何を詰めたらいいかな 思い出って作れば良いの、と聞いた。作りたいの、と聞き返された。それには少し考えてよく分からない、と返す。思い出が欲しい訳ではないと思う、必要な訳でもないと思う。だがしかし何か妙に空っぽな気がしてそれが落ち着かないというのはあって。 「そのうち気付いたら出来てるもんじゃないの」 「それ、体験談?」 「年下の体験談でお姫様は満足出来るの?」 「まあ、貴方は別枠でしょうね」 商談に使う笑みを向けてやればそれ似合わないね、と額を突かれた。 * ラティーシャの瞳は溶けだした @a_a_atd *** いろんな夢を見ておいで 才能のある人だった。なのに生まれた私がどれだけこの国で落ちこぼれでも、決して見捨てることはしなかった。彼女にとって唯一の子供だからでも、王位継承権第一位の王女を生むことが出来たからでもないのだと、分かってしまっていた。 だからこそ分からなかったのだ。 どうしてそんな人が、母として普通≠ノ私を愛してくれたのか。 私を世界に放り出したその人に、私は何も問えないまま。 * いろんなところへ行ってきて いろんな夢を見ておいで そして最後に 君のそばで会おう (銀色夏生) *** 胸に黒い花が咲く 汚いことも覚えたわ、と言う。嫌味ではなく知ってよかったという言葉で。 「まるで今から死ににいくみたいだ」 遺言みたいって言えば良いのに、そんな面倒な言い回しをするから。 「死ぬ気はなくてよ」 「そうなの」 「私が死ぬ時は、貴方が殺す時でしょう」 私の希望をすくった人は、私の希望を殺す役目が与えられるのよ。知らないはずがないでしょう? * 夢見月 http://aoineko.soragoto.net/title/top.html *** |