私は昔から何でも出来た。妹は逆に言えば何にも出来なくて、でも私が持てない唯一のものを持っていた。 自業自得 私と妹の仲が悪くなったのはいつのことなのだろう、と考える。幾つか答えは思い付くけれどもきっと、決定的なものは彼女の好いた人が私に告白をしてきた時だろう。あれが決定打でなくて何が決定打なのだ。妹の動作一つひとつを思い出しながら私は思う。 私は昔から何でも出来た。家のことも、忍としての働きも、何もかも。だから妹はいつだって私に劣等感を抱いていて、周りもそれを知ってか知らずかお姉ちゃんは良く出来るのに、と言うことを止めなかった。そうすれば妹が頑張るとでも思っていたのだろうか。それとも、妹が何かしでかして私がもっとしっかり人間≠ノなることが、あり得たとでも? 私は首を振る。そんなの、あり得るはずがない。 姉妹なのに全く似ていない、というのもまた、妹のコンプレックスを煽る材料だったようだ。だってもしも似ていたならば、きっとその後婚約者として手に入れるその男に、私の代わりで良いから、と言い寄ることも出来ただろう。でも、私と妹は決定的に似ていなかった。それこそ親が違うのかと思うくらいに似ていなかった。私は両親の良いところだけを受け継ぎ、妹は両親の一体何処を受け継いだのか分からないくらいに似ていなかった。 「私、子供が出来たの」 最後に会った妹はそんなことを言った。 勝ち誇った笑みで。 お前には出来ないだろう、と。やっとのことで縛り付けた婚約者に何をしたのか、私が知るべきことではない。ただ既にその時妹は痩せこけていて、誰がどう見ても健全な妊婦ではなかったとは思う。それを私は知っていて、誰かに知らせることもしなかった。これから妹が私だけが彼女の子供の存在を知り、苦しむための期間を設けていることが予想出来たにも関わらず。 それがきっと、妹の生命を蝕むことが予想出来たにも関わらず。 私はおめでとう、とは言わなかった。言う必要も見当たらなかった。だからそう、とだけ呟いてそのまま次の任務へと出て行く。 私には任務だけだった。任務だけが、私のすべてだった。人間なんて愛せない、だから妹は私よりも格段に人間≠ナあることにさっさと満足しておくべきだったのに。 「馬鹿な子」 その言葉がどれほど冷たかったのか、誰も聞いていなかったので私は問うことが出来ないのだ。 *** |