融和する午後 菓子折りを持って現れた友人に、言う言葉は既に決まっていたようなものだった。 「悪いと思ってんの?」 「ウン」 「舐めるのも大概にしてよね」 これは強がりではない。 「私が弱いから敗けた、ただそれだけのことでしょう」 「…あのネ、十六夜」 「人間が死神に勝てる訳じゃないって言いたいの? あのね、私のことなんだと思ってるの」 「天才」 「その通り」 分かってるじゃない、と頷くと、そう言うとは思ったけどさ、と続けられそうになる。だからそのまま遮るように次の言葉を出す。 「なら私は勝てるようになるだけでしょ。相手が死神でも、他の人外でも」 「…流石ニ時間が掛かルんじゃないカナァ」 「それがいつになっても、出来たら私の勝ちでしょう」 「それハ、そうだケド…」 「ならこの話は終わり」 「じゃアこのお菓子も要らなイ?」 「それは要る」 やっと笑った友人の手から箱を奪い取って、やっと神無咲十六夜は日常に戻ることが出来た。 *** |