第一話
魔法使い界、新人魔法使い育成部。
「女王様から箱≠ェ届きましたよ」
年長の魔法使いがそう言うと、もうそんな時期かと他の職員たちが囁き合う。
「さあさ」
ぱん、と彼女が手を打つと、再び視線が彼女に集まった。
「箱≠ェ届いたということは新しく魔法使いが生まれるということです。
女王様のお印がついた箱≠ナすから、皆まで言わずとも分かりますね?
今期の配達員は誰ですか?」
応えるように静かに、三人が前に進み出る。
年長の魔法使いが右手に出した杖をすい、と振ると、箱が三人の前へと飛んで行く。
「これは特別警戒業務です」
箱を受け取った三人に、注がれるのは硬い声。
「更に、女王様より直々の警告を頂いております。くれぐれも、警戒を怠らぬように」
建物を出た三人は一度目配せし合うと、頷いて各方向に散った。
その後ろから後を付けて来る、一つの影に気付かずに。
「オレ、こういうの趣味じゃないんだけどね〜」
箱を手に取り金髪の青年が呟く。
足元には先ほど育成部を発った魔法使い。
意識がないのか地に伏している。
「ま、あの方の命令だし仕方ないんだけど」
左手を翳すと箱は光に包まれた。
しかしそれも一瞬のことで、光はすぐに収まり箱は元通りになる。
「オレの仕事はこれだけ。これをあの子に通常通り届けるのは貴方の役目だよ」
だから殺さなかったし、
襲撃方法も背後から一撃、なんていうまどろっこしい真似をしたんだよ。
そう続けながら気絶している配達員の手に箱を握らせ、青年は去っていく。
ただ、何かの始まる気配だけを残して。
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20140602
20150107 改訂