今日もまた、少年は、少女の元へ来ていました。



「泣かないで」
少女は言います。
「泣いてほしくないの」
更に続けます。
「どうしたら、貴方は泣きやんでくれるの?」
少年に、声は届いていません。

「私は貴方の傍に居た時、どうしてた?」
少女は、少年の泪を掬い上げます。
泪は少し輝いて、ふっと、消えていきました。
少年は、泣き続けています。

「全部、忘れてきたから、分からないよ…」
少女はこまったように、眉を寄せました。
少年の泪は止まりません。
「それに」
少女は呟きます。
「どうして貴方は、私を見てくれないの?」



少女は気付いていませんでした。うっすらと見える、その背の羽に。





20110422